学寮祭の夜(ただしワンフロア)   
以前書いた通り、昨日は寮でフロアパーティを行いました。

「外国人学生のためのレポートの書き方」の授業を終え、家に帰り、予定通り昼寝しました。2時間ほど。

さて、6時になり、準備開始です。
と思いましたが、みんな時間どおりには集まらないものです。
かと思うと、夕飯の準備を先に始めたり・・・。
割と適当です、みんな。

それでも、ぼちぼちと、テーブルやソファーやとにかく邪魔になりそうなもの(もしくは酔ったお客さんに壊されそうなもの)を全部キッチンの外に運び出します。
電球は、青いものに取り替えたり、蛍光灯には薄い青色の紙をかぶせ、雰囲気もそれっぽくなってきます。
天上にも、紙でつくった飾りを貼りました。

ドリンクを販売する机は、廊下に設置します。
外が十分に寒いので、ドリンクは全てベランダへ置いておきます。

そうこうするうちに、前ゼメスターまでこの階に住んでいて、今日DJをやってくれることになっている、アメリカ人のパパイヤさん(仮名・パパイヤ鈴木さんに似ているのです)も何やら機材を持って到着しました。

たいして時間はかからずに準備は終了しました。
あとは開始を待つのみです。
私もおなかがすいたので、何かつまみにいったん部屋へ戻りました。


9時になりました。
パーティ開始です。
キッチンに行きましたが、ほぼ住人のみです。
まだ始まったばかりですからね。
でももうみんな踊ってます。

みんなを見て、まずい、と思いました。
みんな、準備をしていたときと違って、ちゃんと着替えているじゃあないですか。
しかもなかなかお洒落に。
そのまま、セーターとジーパンで出て来た私。
これは、ちょっと、なかなか居心地の悪いものがあります。
なので一度部屋に戻って、何かないか探してみました。

でも、袖無しならともかく、長袖で、それっぽい服なんて持っていません。
タンクトップじゃあ、寒すぎますし。
とりあえずキャミソールにカーディガン羽織って、セーターよりはちょっとましかな、くらいの格好で出直しました。

10時くらいにぽつぽつとお客さん、というか住人の知り合いが来だしたものの、まだまだ寂しい状態です。
このままで、テレビが買えるほど稼げるのでしょうか・・・?

同じ階に、日本人の女の子も1人住んでいます。
彼女に訊いてみました。
「ねえねえ、誰か知り合い呼んだ?」
「一応誘ってはみたけど、なんかみんな用事あるみたいで来れないって」
「私も、何人かに声かけて、行けたら行くって云ってたけど、たぶん来なそう」
「私たち、貢献してないねえ」
「ねえ。なんか申し訳ないねえ」

こうなったら、自分たちで飲み物を買って、少しでも売り上げに貢献しないといけないのかも・・・と思うのも束の間、10時半過ぎくらいから、お客さんがどっと増えてきました。
キッチンは人でいっぱいです。
廊下にも、飲みながら立ち話してる人がいます。

そこへ、その日本人の女の子(ユキ・仮名)の知り合いも来ました。
男の人3人です。
このパーティのことは張り紙を見て知ったとのことです。
彼等は、副専攻で日本語を習っているようです。

彼等はビールを飲んで、
「マイウー」
人が飲むのを見ては、
「イッキ!イッキ!」
「ノンデ、ノンデ、ノンデ、ノンデ」
意味なく、
「ガチョーン」
果てには、
「オシリペンペン」
なんて、小学生以来、聞いたことのないような単語まで発します。
変なドイツ人です。

その上、彼等の踊りもちょっと変わってます。
他の人たちの踊りとは、なんというかちょっと違うのです。
そして、ここは狭いキッチンです。
彼等は巨体です。
なのに、周りを気にせず、激しく踊ってます。
ちょっと危険です。
周りの女の子が、ちょっと迷惑そうな顔で見ていても、全然気付きません。

3人のうち1人は、全然しゃべらないのですが、踊りながら人の足を踏んできます。
30秒に1回くらいの割合でです。
踊りながらでは、なかなか避けられません。
それに集中してるわけでもありませんし。
「なんなの、それ。流行なの?」
と訊くと、日本語で
「ジョーダン」
とのみ答える彼。
そして、その後もやっぱりたびたび足を出してきます。

そのうち、ユキは担当の時間になったので、飲み物の販売に行ってしまいました。
一人、奇妙な3人組と取り残された私。
いえ、彼等は親切な人たちなのです。
なのですが・・・。

巨体に取り囲まれるようにして、踊り続ける私。
楽しいような、困ったような・・・。
そんな私を見兼ねたのか、同じ階に住んでいるドイツ人の女の子が私の元へ。
「たまご、前のほうで一緒に踊ろう」
と手を引っ張って、連れていかれました。
こうして救出された私だったのでした。


12時になり、私の飲み物担当の時間になりました。
販売の担当は2人1組で行います。
私は、イタリア人の女の子とペアです。
彼女は10月にドイツに来たばかりの交換留学生です。
彼女も私同様、ドイツ語がまだあまり得意ではない様子。
不安な組み合わせだ・・・なんて思っていたのですが、取り越し苦労でした。
飲み物なんて、そんなに種類ありませんし、
注文聞いて、飲み物渡して、お金をもらうだけです。
全然難しくありません。

とはいうものの、ビールは瓶で販売し、デポジット(瓶代)が含まれるのです。
ビールが1,5ユーロ、瓶代が0,5ユーロなので、初めて買う時には2ユーロになります。
2回目から、空き瓶と交換するときには
ビール1,5ユーロ + 瓶代0,5ユーロ − デポジット0,5ユーロ
で1,5ユーロになります。
ちなみに、9時から10時と、1時から2時は《特別タイム》でビールが0,5ユーロ引きになります。

でも、たまにいるのです。
「ビールが1,5ユーロで、自分は今空き瓶を渡したから、デポジットの0,5ユーロを引いて、1ユーロだろう!」
と主張するお客さんが。
違います。
その度に説明するのですが、みんな自分のほうが正しいと思っているので、逆にこっちを説得しようとします。
だーかーらー、違うんですってば。

それでも無理矢理1ユーロだけ置いて去って行こうとする人もいました。
逃がすまじ!と思い、大声で
「もしもーし!ちょっと待ってくださーい」
と叫ぶと、彼は嫌々戻ってきました。
所詮、ここは寮のワンフロア、狭い空間です。
逃げられません。
さも私が理不尽を云っているかのように、彼はしぶしぶあと50セント払っていったのでした。

おじいさんも一人来ていました。
はっきりいって、場違いです。
浮いてます。
彼は、寮の敷地内にある遊技場(まだ行ったことがないのですが、ビリヤードなんか置いてあって、アルコール類も売っているらしいです)にもよく来るらしく、なかなか有名なおじいさんらしいです。
でもやはり学生ではないようです。

おじいさんもビール買いにきました。
お釣りを渡した際、手にキスしようとしてくるじゃありませんか。
それは嫌だぞ、と思ったのですが、避けられず。
おおおおおお。

気を取り直して、お客さんを捌いていると、今度は少年が英語で何やらわめいてきます。
「ビールを1リットルくれ」
ここで売っているのは、0,5リットルの瓶です。
「ビール2本ですか?」
簡単な英語ならなんとか理解できるものの、しゃべれない私はドイツ語で答えます。
しかし彼は英語で
「ビール1リットル欲しいんだ。いくら?」
と云うばかりです。
かみ合いません。

「ここでは、0,5リットルの瓶ビールを売っています。ビールは2種類です。ベックスとバーシュタイン」
と云って実際に瓶を見せると、ようやくわかってくれたのか
「じゃあ、バーシュタイン」
「1本ですか?2ユーロです」
と云うと、今度は
「2ユーロ?でも他の寮のパーティでは、デポジット込みで1,5ユーロだよ」
(昨日は違う寮でもフロアパーティをやっていました)
とごねます。

でもそんなこと云われたって、どうしようもないのです。
「でも、残念ながらここでは2ユーロなのです」
と云うと、彼は
「わかった。じゃあ、はい。2,5ユーロ。0,5ユーロはチップ。君は親切だったから」
と、2,5ユーロを渡していきました。
意味がわかりません!

本気でそう思っているのでしょうか、
皮肉なのでしょうか、
それとも単に酔っぱらっているだけなのでしょうか。
とりあえず有り難く受け取っておきました。

ところで、聞いたところによると、この同じ日にやっていた違う寮のパーティでは、閑古鳥が鳴いていたとのことでした。
こちらのパーティと何が違ったのかわかりません。
ビールは、《特別タイム》以外、そっちのほうが安かったみたいですし、
音楽が良かったのでしょうか・・・?
ありがとう、パパイヤさん。

そこのフロアの学生がこちらのパーティを偵察に来て、繁盛しているのを見ると
「ちくしょう!」と叫び、怒り狂ってガラスの扉を蹴っ飛ばしていったらしいです。
こ、怖いです・・・。
しかし、大人げないことをしますね。

さて、お客さんも一区切り付き、もう少しで担当時間終わりだ、と思っていると、突然廊下の電気だけが消えてしまいました。
飲み物の販売は廊下でやってます。
真っ暗、というほどではないですが、お金、見えません。

そこへ、狙ったわけではないでしょうが、一人の学生がきました。
空き瓶を受け取り、新しいビールを渡すと、なにやら細かい小銭を渡してきます。
でも見えないので、いくらかわかりません。
彼が云うには、
「20セント足りないんだ。ぼくもうお金ないから、ちょっと借りてくる。すぐ戻ってくるから」
ちょっと怪しい、と思いつつも、こういう場所だから大丈夫かな、と思い
「わかりました」
と答えると、彼はキッチンのほうに戻って行きました。

しばらくして、電気がふたたびつきました。
そこで彼から受け取ったお金を確認してみると、79セントです。
中途半端な・・・・。
というか、20セントじゃなくて、71セント足りないんですけど!

彼が戻ってきました。
20セント持って。
「これであと1セント足りないことになるんだけど、1セントくらい構わない?」
1セントくらい誰かに借りれるでしょうに!
とにかく1セントではなく、あと51セント足りないのです。
それを伝えると、
「えっ、そうなの。困ったな〜」

そんなこと云われたって私だって困るのです。
残りのお金を払いにちゃんと戻ってきてくれたので、彼に好感は持てるのですが
(そんなことで好感を持ってどうするのです)
彼だけ特別扱いするわけにはいきません。

ふと時計を見ると、1時ちょっと過ぎてます。

「1時から2時までは《特別タイム》でビール50セント引きになるから、じゃあもう特別タイムってことでいいですよ」
ということにして、円満に解決、となりました。
と思ったのですが、1セント足りないの忘れてました。
まあ、よいでしょうか。

そこで、交代の人が来たので、任務終了です。
ちょっと疲れたので、部屋に戻って休憩することにしました。


販売時に間違って開けてしまったビールを、責任取って買いました。
ビールは苦手ですけど、せっかく買ったからちょっとは飲まないと、と思って舐める程度に口にしました。
私、アルコールにはものすごく弱いです。
部屋に居ても、もちろん音楽や人の声が聞こえてにぎやかですが、うとうとしてしまいました。

気がつくと3時です。
ふたたびキッチンに出て行くと、お客さんはだいぶ帰ったようでした。
既にかなり眠いのですが、パーティはもうそろそろ終わりそうです。
もう一度部屋に戻ったら、確実に寝てしまいます。
片付けまで起きていなくては、と思い、キッチンの隅で待機することにしました。

フロアの住人としゃべっていると、彼が「踊る?」と訊いてきました。

音楽はいまや、まったりとした選曲。
男女でペアになって(なんて表現したらよいのでしょう)踊っている人たちもいます。

《踊る?》ってどんな意味で訊いているのでしょう、彼は!
単に、私が踊るかどうか訊いているだけなんでしょうか?
それとも一緒に踊るつもりなんでしょうか?

強制的に踊らされた経験を経て、最近ようやく踊ることに抵抗が少なくなってきた私です。
それでも男の人と一緒に踊るなんて無理です。
耐えられません。
しかも、こっちの人のセクシーに絡んで踊ることといったら。
見てる分には、かっこいいなあと思いますが、
そんなのは、到底私向きではないのです。

そんなことを考えていたら、面倒くさくなってきて
「私、踊れないから」
と適当に答えました。
「え?でも踊ってるの見たけど」
「あれは踊りじゃなくて、ふらふら動いてただけだから」
(これはまあ本心なのですが)

お客さんがほとんどいなくなったのを見計らい、片づけ開始です。
床を磨き、飾りを外し、キッチンを元の状態にもどし、終了です。
ちなみに、一番働いていたのは、ある住人の彼氏さんでした。
どうも、すみませんねえ。

こうして、フロアパーティは盛況のうちに無事終了したのです。
これで、キッチンに新しいテレビ買えます。たぶん。
しかし、実はフロアでパーティを行うことは禁止されてるらしいのです。
2週間ほど前に、同じ建物の違う階でも開催されたのですが、
後日寮母さんに怒られたそうです。
どうか、寮母さんにばれませんように。
2004/11/20(Sam)  



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